ライーブはひと目でカタール人の民族衣装をモチーフにしたことを感じるデザインである。つまり、中東で行われる大会だということがすぐに理解できる。
「そういう意味でもよくできたデザインです。最近発表になった2024年のパリ五輪・パラリンピックのマスコット『フリージュ』はフランス革命のとき、自由の象徴になった『フリジア』という帽子をデザインのもとにしています。つまり、大会マスコットは動物ではない方向で、その国の歴史や文化を象徴するようなトレンドに移行しつつあると感じます」
■なぜ「足がない」のか
ちなみに、東京五輪・パラリンピックのマスコット「ミライトワ」と「ソメイティ」は、ある意味、とても“日本的”だという。
「あの大会エンブレムもそうですが、要するに一番無難なものを選んだ。日本らしい忖度の末に誕生したという気がしてなりません。なので、インパクトに欠けるものになってしまった」
デザイン的に振り切ったという点では、ライーブはサッカー大会のマスコットにもかかわらず、ボールを蹴る「足」がない。
ところが、宇都宮さんは、こう指摘する。
「過去の大会マスコットを振り返ると、実はボールを蹴っているマスコットは少ない。というのは、デザイン的には“足は関係ない”という話なんです」
デザイナーからすると、ボールは足ではなく、顔の近くにあったほうがいいという。
「人間は無意識のうちに顔に注目します。なので、たいていのマスコットはボールを顔の近くで持っている。そう考えると、別にライーブに足がなくても別に全然問題ないわけです。かぶりもののとしてグッズを展開するにも足がないほうがデザインの自由度が増すわけで、デザイン的に完全に割り切っている」
FIFAのグッズ戦略とは直接の関係はないだろうが、現地では国旗など、自分たちのナショナルカラーのかぶりものを身につけた各国のサポーターをよく目にするという。
「例えば、アメリカのサポーターは自分で作ったのかどうかわかりませんが、星条旗のかぶりものを頭につけている。それが今大会の一つの流行になっています」