2つ目の新しさは、従来の大会では定番だった「着ぐるみが登場しない」ことだ。
「つまり、ライーブというのは『中の人』がいないというか、実態がないわけです。これまでの大会では、マスコットの着ぐるみが試合会場に現れて、ハーフタイムに踊ったり司会者とやり取りしたりする場面がありましたが、今回はそれがまったくありません」
さらに宇都宮さんは、こう続けた。
「開幕セレモニーのときに巨大なライーブがドーンと出てきましたが、多分、もう1回出てくるとしたら決勝戦の前でしょう。リアルなかたちで出てくるのはその2回だけだと思います。つまり、ライーブという存在はインターネット空間、スマホやモニター画面に登場することに特化している」
宇都宮さんは、今後FIFAはライーブを足がかりにマスコットを拡張現実(AR)化すると予測する。
「例えば、AR機能のあるサングラスをかけるとそこにマスコットがプカプカと浮いて見える。あと、ARの中に存在するマスコットにファンが会いにいくとか。ライーブはそんなAR戦略のさきがけではないか、というのが私の読みです。多分、4年後にはさらに進化するでしょう」
■ひと目で中東の大会とわかる
さらに、ライーブはデザイン的にも秀逸かつ、画期的だという。
W杯にマスコットが初めて登場したのは1966年のイングランド大会だった。
「『ウィリー』というライオンのマスコットでした。当初は各国の組織委員会がばらばらにつくっていたので、モチーフは子どもや無機質なものがありましたが、基本的にはアクティブな動物を素材にしたものが多かった」
デザインに統一感がもたらされたのは、ヒョウをモデルにした2010年南アフリカ大会の「ザクミ」からだ。
「動物に白いTシャツをあしらったマスコットに統一していくのかなと思っていたら、ライーブでガラッと変わった。お気づきの読者もいると思いますが、開幕セレモニーのとき、過去の大会マスコットが勢ぞろいしました。つまり、FIFAは過去のマスコットをリスペクトしつつ、新たな時代に向かおうとする宣言だと、私はとらえました」