完全に一軍の戦力となっている選手は増田と松原の2人だけ。しかし昨年はレギュラーをつかんだかに見えた松原も今年は成績を落とし、背番号9もわずか1年ではく奪となっている。他では2018年育成1位の山下が1年目にいきなり二軍で首位打者を獲得しているものの、翌年以降は故障で結果を残すことができず、他球団での支配契約を目指してわずか3年で退団している(今年からは社会人野球の三菱重工Eastでプレー)。これを見ても“育成の巨人”と呼ぶには寂しい状況であるのが、よく分かるだろう。

 一方で12球団で最も多く育成選手を指名しているソフトバンクは千賀滉大、牧原大成、甲斐拓也の3人が主力となった2010年以降も飯田優也(2012年育成3位)、石川柊太(2013年育成1位)、周東佑京(2017年育成2位)、大竹耕太郎(2017年育成4位)、大関友久(2019年育成2位)が一軍の戦力となり、リチャード(2017年育成3位)と渡辺陸(2018年育成1位)もブレイクの兆しを見せている。育成ドラフトの結果だけがもちろん全てではないが、巨人とソフトバンクのチーム力の差の一因となっているとは言えそうだ。

 ただ、そんな巨人の育成ドラフトだが、過去2年では喜多、戸田、菊地の3人が早くも一軍デビューしており、二軍、三軍で結果を残している選手も少なくない。そして今年育成ドラフトで指名した選手は過去と比べても楽しみな選手が非常に多い顔ぶれとなっている。特に育成1位の松井颯(明星大)は150キロ前後のスピードと安定したコントロール、変化球を備えた投手で、育成まで残っていたのが不思議な存在だ。菊地と比べても大学4年時点での実力は明らかに上であり、それを考えると早期の支配下契約、一軍デビューも十分に期待できるだろう。

 松井以外の8人は全員が高校生という思い切った指名になったが、それぞれ特徴のある選手が多く将来的に面白い。特に投手では育成2位の田村朋輝(酒田南)、野手では育成6位の三塚琉生(桐生第一)がこの順位で指名できたのは幸運だったと言えるポテンシャルの持ち主である。順調に成長すれば、チームの将来を背負う選手になることも十分に期待できそうだ。

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巨人の“育成力”は増していくのか