「今回の裁判は旧統一教会との『最終決戦』です」
1980年代の「霊感商法追及キャンペーン」以来、およそ35年間にわたって旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の闇に迫り続けてきたジャーナリストの有田芳生さん(70)は、教団から名誉毀損で訴えられたことについて、静かにそう語った。衝撃の内容を詳(つまび)らかにする。
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事の始まりは8月19日。
日本テレビ系の情報番組「スッキリ」で有田さんが旧統一教会に対して次のように発言したことだった。
「霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めているわけですから」
これに対して旧統一教会は10月27日、都内で記者会見を開き、「事実ではない」と反論。日本テレビと有田さんに対して名誉毀損で訴訟を起こすと説明した。
■旧統一教会の「有田退治」
これまで有田さんはメディアに出演する際、取材に基づいた慎重な発言を心がけてきた。うかつな発言をすれば執拗に反撃してくる旧統一教会の体質を熟知しているからだ。
同様に、有田さんがそんな人物であることは百も承知であろう旧統一教会があえて名誉毀損で訴えたのは、言論萎縮を目的とした「スラップ訴訟」である可能性もある。
そう、水を向けると、有田さんは「訴えられてからテレビの出演は一切なくなった」と言う。
「今回の件について、背景を語ってほしいという局もありました。スタジオに行く準備をしていたら、『ダメになった』と、連絡があった。あれは日本テレビでの発言ですから、他局が扱うのは問題ないはずですが、どこからも出演依頼がこなくなった。萎縮しているのか、わかりませんが……」
有田さんが入手した旧統一教会の内部文書によると、教団は「有田対策」「有田退治」に力を注いできた。今回の訴訟も一見すると、旧統一教会の思惑どおりに進んでいるようにも見える。
だが、果たしてそうだろうか。