渋谷~中央林間を結ぶ田園都市線
渋谷~中央林間を結ぶ田園都市線
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 今年10月、タレントのマツコ・デラックスがトーク番組で「私は田園都市線が嫌いなんです」と発言したことが物議をかもした。この発言には多くの視聴者がSNSに意見を投稿し、「田園都市線」は一時、ツイッターのトレンドワードにまでなった。渋谷駅から中央林間駅を結ぶ田園都市線は、東急による沿線開発もあり、富裕層も多く住むとされる。嫌われるのは、それゆえの“やっかみ”なのか。自身も田園都市線ユーザーだという鉄道ライターの土屋武之が、独自の視点で「嫌われる理由」を分析した。

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■親しまれない東急田園都市線

 タレントのマツコ・デラックス氏が「東急田園都市線が嫌い」と公言したと聞いた時、正直に「さもありなん」と思ってしまった。個人的な感想だしバラエティー番組上での発言だから、別に目くじら立てる必要もないのだが、SNS上などでは予想以上に大きな反響があったようである。

 かく言う私。1999年に田園都市線沿線へ引っ越してきて四半世紀近く、好きも嫌いもなく田園都市線の世話になってきた。生活上、無くてはならない鉄道である。使っている路線なので、私自身は特に反発も覚えず、「嫌うだけの要素はあるのだろうな、よその住民にとっては」と感じただけだった。

 ただ、この「よその住民(田園都市線沿線以外の住民)にとっては」の部分が重要で、要するに沿線住民以外には、用事がない、使う機会に乏しい鉄道なのだろう。だから、よその住民には親しみがないのだろうと思う。大手私鉄の幹線の多くは、例えば同じ東急の東横線が東京(渋谷)、横浜と両端に大都市を抱えているから、その都市に用件があれば乗る機会も多いはずだ。ひるがえって田園都市線は、終点の中央林間が何市に属するのかすら知られていないだろう。正解は大和市。人口は24万人ほどだが、首都圏では特別大きな都市でもない。

 また、田園都市線は観光的な要素にも乏しい。産業の集積はそれなりにあるが、大学や高校はそう多くない。比較的近接している小田急小田原線と乗り比べてみるとよくわかるが、あちらは若者で始終にぎわっている。沿線に各地から学生を集める大学がいくつも立地しているからだ。しかし、それに比べて田園都市線に乗る若者は少ない。

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東横線に比べると乗客は「地味」