高橋まつりさん
高橋まつりさん
この記事の写真をすべて見る

 広告大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が、長時間労働を苦に自ら命を絶ってから7年。長時間労働は社会的にも大きな問題となっているが、その後も過労死が後を絶たない。まつりさんの母幸美さん(59)は、「いまだに大手企業で労働環境の実態が変わっていない」「電通の監視を続ける」と過労死撲滅に向けた活動を続けている。

【写真】「お母さん いつまでも元気で」のメッセージ入りのケーキをプレゼントした時のまつりさんと幸美さん

 2015年12月25日、クリスマスの朝だった。

 携帯電話が鳴り、雑踏の中で応答した。当時、筆者が所属していた週刊朝日の編集部員からだった。

「まつりちゃんが亡くなったらしい」

 明るく、元気いっぱいで、たくさん話して食べるのが大好きーー。そんな印象の学生だった。

「なぜ、まつりちゃんが?」

 ただ、あぜんとするばかりだった。

 東京大学時代、テレビ番組に出ていたまつりさんは、

「将来は週刊朝日の記者になりたい」

 と答えていた。編集部は、そんなまつりさんを探し、記事の編集や動画サイトのアシスタントとしてアルバイトをしてもらった。どんな仕事もすぐに理解し、抜群にできた。筆者の原稿のミスなども指摘してくれていた。

学生時代に週刊朝日のインターネット放送に出演していた高橋まつりさん
学生時代に週刊朝日のインターネット放送に出演していた高橋まつりさん

 就職活動の時期には、

「私、電通に通ったんですよ!」

 と電話でうれしそうに報告してくれた。大きな会社でも間違いなく活躍し、将来が嘱望されていたはず……。

 命を絶ったあの日から7年。まつりさんの命日にあわせて幸美さんを訪ね、遺影に手を合わせた。

「今もずっと頭のなかはまつりのことばかりです。片時も忘れることはありません」

 幸美さんがそう話す。まつりさんのベッドを今も使っているという。目の前には、まつりさんの大きな肖像画や写真、まつりさんが大事にしていた財布など、思い出の愛用品が置かれている。

「今年は私にとっても大変でした。なんとか、この日を迎えることができたのも、まつりが助けてくれた、守ってくれたんだと思っています」

 幸美さんは今年、子宮体ガン(子宮内膜ガン)が見つかり、7月20日に手術をした。

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選
次のページ
他の会社からみればブラックでしょうかね