長く旧統一教会問題に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会の加納雄二弁護士は、この裁判で旧統一教会の問題が解明されることを期待する。

「山上容疑者の事件は旧統一教会の害悪によってもたらされた事件であり、あまりに結果が重大だ。裁判までには少なくとも2年ほどかかると思う。山上容疑者の犯行動機、旧統一教会との関係もしっかり審理し、根深さを解明してくれるように願いたい」

 この事件をきっかけに、旧統一教会の霊感商法などの問題に批判が高まると同時に、教団と自民党政治家の癒着ぶりも明らかになった。それも一因で岸田政権の支持率は一気に低下。宗教団体などによる悪徳な寄付勧誘を禁じる「被害者救済法」(法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律)が国会で成立するほど大きな問題となった。

 山上容疑者が起訴され裁判が進めば、旧統一教会と自民党との関係性などが改めて注目される。裁判開始が先送りになることは、岸田政権や自民党にとっても好都合だろう。

 山上容疑者の母と同じ奈良の教会で信仰活動をしていた旧統一教会の元女性信者は、山上容疑者の母に誘われて、自宅で話を聞いた時のことを振り返る。

「自宅には旧統一教会の壺、印鑑、ペンダント、分厚い本など数多くのものがありました。山上容疑者のお母さんはとても熱心に信仰されていました。その横で、山上容疑者とその兄だったと思いますが、2人の子どもが遊んでいたことを今も覚えています。あんなかわいい子が、旧統一教会のむちゃくちゃな教えを恨んであんな事件を起こすとは、今も信じられない。私が旧統一教会を辞めた時に、お母さんも一緒にと誘えば事件は起こらなかったと悔いるばかりです」

 そして、こう続ける。

「旧統一教会は、今も現役信者である知人を通して『山上容疑者の母などについて話すな。本当のことを言うと先祖が不幸になる』と告げてきました。こんな大きな事件のきっかけとなっていながら、まったく反省、謝罪する姿勢がありません」

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山上容疑者が罰を受けるのは当然だが……