自作の銃を持つ山上徹也容疑者
自作の銃を持つ山上徹也容疑者

「逮捕初日から、旧統一教会と母親の関係、そこから旧統一教会とつながりがあった安倍元首相殺害に至った動機などをしゃべっている。何度同じ内容を聞いても、答えは同じでブレがない。旧統一教会がなければ幸せな家庭で、自分も苦労しなくてすんだ、すべては旧統一教会が悪いということを繰り返していた」

「山上容疑者は、冷静沈着に犯行の瞬間を狙っていたことも供述している。安倍元首相の演説前から周囲を歩いて、警備の状況をチェック。隣接する近鉄西大寺駅の階段でも様子をうかがっていたという。安倍元首相の背後からSPらがいなくなるタイミングを図っていたほど冷静だった」

「自作の密造銃についても詳細を述べている。動画サイトを参考に密造したというが、密造銃はうまく発射できなかったりして自分自身がけがするようなこともある。そこで、奈良県の山中に何度も出かけて試し撃ちをしていた。その場所も、人目につかないように選定していたとも供述している」

「銃撃後、SPらに身柄を確保されたときも、『やったから仕方がない』と冷静な感想を供述している」

SPらに確保された山上容疑者=2022年7月8日午前11時30分
SPらに確保された山上容疑者=2022年7月8日午前11時30分

 このため、検察でも山上容疑者に責任能力があるという見方は強かった。

「犯行直前に決まった安倍元首相の奈良での演説予定をしっかりチェックして、下見までして犯行に及んでいる状態ですから、精神的にも十分に責任能力はあるはずだ」

 それでも鑑定留置を進めたのは、重大事件だけに裁判で万が一にも責任能力が問題にならないよう、検察が万全を期したようだ。

 山上容疑者が奈良地検に起訴されると、奈良地裁で裁判員裁判にかかるとみられる。山上容疑者には奈良弁護士会から数人の弁護人が選任され、面会をしている。

「山上容疑者の弁護人は、旧統一教会への恨みについて、ニュースなどで出ている以上に根深いものがあるという見方を示している」(捜査関係者)

 公判開始前には、裁判官、検察官、弁護人が争点を明確にし、証拠を厳選する公判前整理手続きが行われる。だが、「動機」が旧統一教会への恨みということで、山上容疑者の教団による被害の実態、安倍元首相とのかかわりなどをどこまで立証するのかといった、争点をめぐる手続きが長期化し、公判開始まで数年間かかることも予想される。

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裁判までには少なくとも2年ほどかかる