数年前に、安田大サーカスの仕事がガクンと減ってしまって、「このまま僕らは消えていくのかな」っていう不安をずっと抱えていて苦しかった時も、ボクは散歩のおかげで救われたことがある。
東銀座にある松竹芸能の会議室で、安田大サーカスのネタ合わせをした帰りだったかな。団長が「少し歩いて帰ろうか?」ってめずらしくボクを誘ってくれた事があったんだ。自転車を押しながらの団長と2人っきりで、約2時間の散歩。誰かの悪口や、「あの収録面白かったよなー」とか、他愛も無い話で、すごく盛り上がったのを覚えている。すると、散歩が終わる頃には、さっきまで感じていた苦しかった気持ちが、すごく楽になっていたんだよね。すごい、びっくりした。あの時が、散歩の「ポジティブ」な効果に、ボクが初めて気づいた瞬間だったかもしれない。
それ以来、ボクは、少しネガティブな気分になっていたり、深く考え事をしたいなっていう時こそ、むしろ散歩することを意識している。
だから、今、悩み事があって苦しんでいる人こそ、だまされたと思って、ふらっと散歩してみるといい。歩くだけで、自然と、プラス思考になれる可能性もあるから。
ちなみに、ボクのおすすめの散歩スポットは、レインボーブリッジ。レインボーブリッジって、歩いて渡れることを知らない人が意外と多いんだよね。仮に、知っていたとしても、「すごく大変」って思っている人がいるんだけど、全然そんなことはない。片道25分くらいで渡れちゃうから、気軽な気持ちで渡っても大丈夫。北か南か、どっち側の道を渡るかで景色は全然違うし、さらにいえば、朝と夜とでも、まったくの別世界になる。つまり、レインボーブリッジは、4つの顔をもっているすてきな場所なんだよね。デートにだっておすすめだから、気になった人はぜひ、一度渡ってみてほしい。
散歩は楽しい。ただ、好きだからって歩きすぎるのは、体に良くないから注意が必要。ボクは、以前、ある健康番組に出演した時に、「このままじゃ死んじゃう」と指摘されて、教育入院したことがあるんだけど、退院後、血糖値を下げる目的で、毎日2~3万歩歩いていたんだ。すると、「歩きすぎは、逆に体に悪い」って、ドクターに注意されたことがあるからね。
今考えると、そりゃそうだなって思うんだけど、その時は、「せっかく頑張って歩いているのに、なんでやる気をそぐようことを言うんだろ?」って、なんだかボクは腹が立っちゃって、逆に、後日、4万5千歩も歩いてしまった(笑)。さすがに、これだけ歩くと、疲れてはてて、歩きながらうたた寝もしそうになった(笑)。結局、足を痛めてしまったし……。いくら大好きだからって、やっぱり無理をするのはいけないしん。
(構成/AERA dot.編集部・岡本直也)