『M-1グランプリ2022』で優勝したウエストランドの井口浩之(写真左)と河本太
『M-1グランプリ2022』で優勝したウエストランドの井口浩之(写真左)と河本太
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 12月18日に行われた漫才コンテスト『M-1グランプリ2022』でウエストランドが優勝を果たした。決勝の舞台で彼らが披露した漫才は「悪口漫才」「毒舌漫才」などと呼ばれた。小柄で多弁な井口浩之が、相方の河本太の出題する「あるなしクイズ」に答えるという形で、手当たり次第にあらゆる方向に悪態をつきまくるというものだった。

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 彼らが2年前の2020年に初めて決勝に上がったときには、モテないキャラの井口が自分を相手にしてくれない女性たちに対して悪態をつく自虐的な漫才を演じていた。

 このときには会場の空気をつかむことができず、10組中9位に終わった。審査員の松本人志は「刺さる言葉があっていいんですけど、もっと刺してほしかったな」とコメントを残した。

 その経験を踏まえて、ウエストランドは一点攻撃から全方位攻撃に方針を転換した。いろいろなものへの悪口を1つのネタに集約させるために「あるなしクイズ」という優れたフォーマットを生み出し、これを軸にして『M-1』で戦える2本の漫才を仕上げた。そして、見事に王者に輝いた。

 このような悪口漫才が優勝したことで「人を傷つけない笑い」が求められていた時代の空気が変わる、今後は毒舌ネタがお笑い界のトレンドになるのでは、などと言う人もいる。また、窮屈な時代だからこそ、こうやって堂々と悪態をつくようなネタが潜在的に求められていたのだ、と主張する人もいる。

 しかし、個人的には、『M-1』で優勝した漫才に何らかの意味を読み取ろうとする「社会時評」的な言説にはあまり同意できない。ウエストランドは、たまたまその日の出場者の中で一番ウケたから優勝しただけであり、それ自体に深い意味はない。

 お笑い界のトレンドがここから一気に変わるとも思えない。仮に、ロングコートダディが優勝していても「マラソン漫才」をやる芸人が増えるわけではないし、男性ブランコが優勝していても「音符運搬漫才」は増えないだろう。そんなに単純なものではないのだ。

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どんな時代にも「毒舌芸」は必要とされる