でも、芸人が悪口っぽいネタをやっているとなぜか「悪口」などと言われたりする。そこには人々の芸人に対する無自覚な差別と無理解が潜んでいる。要するに、ボクサーや俳優ほどにはプロの仕事だと思われていないのだろう。

 今さら言うまでもないことだが、そもそも毒舌と呼ばれる芸でなぜ笑いが起こるのかというと、そこに何らかの共感があるからだ。みんながうすうす思っていたけど口に出せなかったようなことを、芸人がはっきり言い切るからこそ「見事に言い当ててくれた」という爽快感から笑いが生まれる。毒舌はその対象を突き放すものではなく、聞き手の心に寄り添う一種の共感芸なのだ。

 近年、人を悪く言うとか、傷つけるといったことに関して、誰もが過敏になっている。それ自体は悪いことではないのだが、プロの芸人がネタの中でやっていることにまで、その基準を適用する必要はない。面白ければ笑えばいいし、面白くなければ笑わなければいい。お笑いを見るときに必要な心構えはそれだけだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?