大蔵住宅は高齢化が進んだとはいえ、気安い付き合いのできるコミュニティーがあった。建て替え後もそれが維持されるのか、宮崎会長は心配する。
「やはり、最初が肝心なので、戻り入居の方と一般入居の方がどうやったら一番うまくいくのか、考えてほしい、ってお願いしたんです」(宮崎会長)
■新旧住民を結びつける防災
「そんなお悩みを宮崎会長からうかがいましたので、戻り入居された方と、公募で入居された方が交流するきっかけとして防災イベントを企画しました。建て替えにあたって『(災害用)マンホールトイレ』『防災井戸』を整備しましたので、その設備の紹介も兼ねて多世代の方に集まってもらおうという試みです」(JKK東京の担当者)
12月4日に開かれた防災イベントには178人が集まった。
「天気がよかったこともあって、大勢が集まりました。大蔵住宅から28人、建て替えた住宅からは74人。そのうち32人が戻り入居の人でした。さらに、近隣の住民の方も参加しました」(JKK東京の担当者)
イベントは大成功だったようだ。
宮崎会長も建て替えられた新しい住宅「カーメスト大蔵の杜」に入居する予定だった。
「昭和39年からずっと同じ場所に住んでいましたから、そこを離れるのは本当に複雑な心境なんです。でも、新しい部屋からは富士山がよく見えるそうです」
エレベーターで降りれば集会所がある。同じ棟に昔からの知り合いが何人もいるので「落ち着いたらみんなで集まろうって言っているんです」と、宮崎さんは笑顔でそう話してくれた。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)