坂井:ま、こうやって「オレは言われたからやっただけ」みたいに受け身にまわってオレのせいにしてますけど、コンビを組み直していろいろやってきたおかげでありがたいこともたくさん経験できました。

“ケンカ芸”を見いだしてくださった千原ジュニアさんは恩人だと思っています。

 若手芸人が最初に目指すのは賞レースなんですよ。そこで結果を残してからバラエティーに呼んでいただく。これがオーソドックスな流れです。

 それでいうと、賞レースで活躍してないのに番組に呼んでもらってるのは僕らくらいなんです。それか、ただただ明るい「ティモンディ」くらいか(笑)。

 バラエティーで周りを見回すと、チャンピオンかファイナリストばっかりです。それでも呼んでもらって、笑ってもらえる。そのきっかけになったのがケンカ芸で、それを見いだしてくださったのがジュニアさんですから。

 吉本興業本社で二人で本気でケンカをして、止めにきてくださった先輩に逆に暴言を吐く。ムチャクチャです。クビも覚悟していた中、それを聞いたジュニアさんが先輩に暴言を吐くことは良くないけど、そのシステム自体は面白いといろいろな番組で言ってくださって。単なるトラブルではなくケンカ芸という形にしてくださった。

 このシステムを作っていただいたことに純粋に感謝しかないですし、もうひとつ、芸人の意味も教えてもらったと思っています。

 もうクビかもと思うようなことでも、やりようによっては武器になる。それくらい逸脱した世界であり、今は“まとも”が求められもするけど、異常な世界でもある。芸人という仕事の根本と奥深さを見せてくださったことにも感謝しかないです。

 僕は関西人でもないですし、若い時のジュニアさんも知らないですし、最初は尊敬もなかったし、関西の芸人さんがジュニアさんに対して特別な見方をする感覚も分からなかった。

 でも、期せずして自分たちが根本の部分でジュニアさんに触れることになり、本当にすごいなと思いました。

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今年は賞レースを意識せずにネタを作る