金ちゃん:勝手に泥船と決めんなよ(笑)。「自分という泥船」だったらオレも横でうなずいてられるけど「『鬼越トマホーク』という泥船」となると、オレも含まれるからな。
坂井:そこは「鬼越トマホーク」でいいんだよ!
それとね、これも大きかったのが、妻の言葉でした。一族も仲が良くないし、大切にしたいけど、結婚して家族になったら人生をめちゃくちゃにしてしまうかもしれない。デリケートな問題ですけど、きれいごとでは済まない話でもあるので、正直に全て話しました。だから、オレは結婚する気はないんだと。それ対して、奥さんが言ったんです。
「芸人なんだから、結婚してすぐ別れても面白いじゃない。それでまた一緒になっても、もっと面白いかもしれないよ」
この言葉を聞いて、結婚できると思いました。自分は本当にムチャクチャな人間ではあるんですけど、意外と古くさいというか「男が幸せにしないといけない」みたいな意識が強い人間だったんだ。そこにも気づかされました。
金ちゃん:今はありがたいことにお仕事をいただけていますけど、これまでを振り返って、一番大変だったのはNSCを出てしばらくしてからの2年間だったと思います。
NSCを首席で卒業して、最初はスッとお仕事がもらえたんです。ただ、それぞれに意地っ張りなところもあるし、首席で卒業したという妙な自信もあったのかもしれませんけど、互いに妙な勢いがついてすぐに解散したんです。
それぞれ別のコンビでやってるものの、浮上する気配すらなく。ちょうどその時に同期の「マテンロウ」と「デニス」がパッと売れていって、それも居心地の悪さに拍車をかけるというか。「トップで卒業したけど、こんな感じなんだ……」という気持ちも乗っかって「もう辞めよう」という思いにもなってました。正直な話。
劇場のグループ分けの中でも最下層になって、本当に箸にも棒にも掛からない。時間は過ぎてるのに、前に進んでいる感覚が一ミリもない。その思いのままコンビ別れしていた期間が2年で、その時はこたえましたね。
本当にどうにもならなかった。だからこそ、もう一回組んだ時に「やっぱりこいつだ」と心底思えた。それを芸人人生の初期の初期で経験できた。この流れがあったからこそ、今がある。それはリアルな思いです。