※写真はイメージです(gettyimages)
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 韓国では2021年以降、「#暴Too」として、芸能人の学生時代のいじめ加害や素行の悪さをSNS等で告発する動きが広まっている。本人がそれを事実と認め、謝罪表明などを行ったケースもあるが、真偽が不確かなまま芸能活動を休止しているK-POPアイドルもいる。いじめ加害の事実がこうして大きなスキャンダルとして扱われることは、韓国社会のいじめに対する関心の高さのあらわれともいえる。韓国の学校教育現場で、いじめ対策はどう行われているのか。また日本との違いは――。韓国の教育問題に詳しい、名古屋大学大学院教育発達科学研究科の松本麻人准教授に聞いた。

【リスト】韓国の9段階「いじめ処分」はこちら。

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■韓国の「いじめ対策制度」とは

 韓国でも日本同様、1990年代以降にいじめが社会問題として顕在化。国民の大きな関心を受け、2004年の「学校暴力の予防及び対策に関する法律」制定を機に国をあげてのいじめ対策が始まった。この法律では、5年ごとのいじめ対策に関する基本計画の策定が義務づけられているほか、いじめ加害者に対する措置と、被害者へのケアも定められた。

 しかし、その対策は実を結んだとはいえず、2011年にいじめを原因とする学生の自殺が相次ぐ。メディアでもセンセーショナルに取り上げられ、事態を重く受け止めた李明博大統領(当時)の指揮で2012年に新たに策定されたのが「学校暴力根絶総合対策」(以下、総合対策)だ。公立・私立を問わず、すべての小学校・中学校・高校で適用される。

「2004年の法律との最も大きな違いは、いじめ発生時の措置が厳格化されたことです。それまで、いじめ加害者に対する処分は、逐一適用されてきたとは言えない状況でした。総合対策で法的根拠が整えられたことで、より確実に処分が実行されるようになりましたし、学校によるいじめの隠蔽が発覚した場合は校長に厳しい処分が下ることも定められました」(松本准教授)  

「学校暴力の予防及び対策に関する法律」で定められた、いじめ加害者に対する措置
「学校暴力の予防及び対策に関する法律」で定められた、いじめ加害者に対する措置

 いじめ事案は、「深刻性」「持続性」「故意の加害かどうか」「加害者の反省の程度」「被害者と加害者の和解の程度」の5つの項目で採点される。各4点×5項目の20点満点で、その点数によって加害者への処分が決定する。処分は1号から9号まであり、9号に行くほど重い。

 もちろん、カウンセリングや療養といった被害者に対するケアも同時に決定される。また、被害者、加害者双方からの異議申し立ても認められている。

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「加害者の人権保護」が課題に