「いじめの認知件数、過去最多の73万件」――文部科学省の2023年度の調査で、そんなショッキングな数字が報告されました。子どもをもつ親にとって、いつわが子がいじめの被害者、あるいは加害者になるかわからないという不安はつきません。いじめ問題の現在地について、『学校を変える いじめの科学』などの著書がある和久田学さんに聞きました。

MENU  まず聞きたい。「いじめ」とは何ですか?  年間のいじめ73万件。この数字は正しいか  いじめの「予後」は想像以上に悲惨だ

 まず聞きたい。「いじめ」とは何ですか?

 ――和久田さんは元教師であり、いじめなどの教育に関する問題を科学的に分析する研究者でもあります。文科省が発表した「73万人」「過去最多」といういじめの認知件数(※)をどのように見ていますか?

  その質問にお答えするまえに、読者の皆さんにおうかがいしたいと思います。

「いじめ」とは何ですか? 

  今皆さんの心に浮かんだいじめのイメージは、きっとそれぞれ違うはずです。なぜなら、私たちすべてが過去になんらかの形でいじめを経験してきたからです。被害者としてだけでなく、加害者、傍観者として。そのときに感じた思いが、みなさんにとっての「いじめ」を定義している可能性が高いのです。

 多くの人が経験していることほど、その中身は経験によってブレます。だからこそ、定義を先に確認する必要があるのです。

 ※令和5年度(2023年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査より

 ――では、「いじめの定義」とはどんなものなのですか?

  文部科学省は2013年に「いじめ防止対策推進法」を施行しました。その中で、いじめについて明確に定義しています。

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神素子
神素子

ライター じん・もとこ/教育系出版社を経てフリーに。雑誌・ウェブ・書籍などさまざまな媒体で、子育て、教育、医療、介護、高齢期などをテーマに記事を執筆。

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