<8/25に決定が出ました。まだ処遇は変わっていません>
と切羽詰まった言葉が最初に記されていた。報道によると決定は8月23日だったが、上田死刑囚が受け取ったのは25日だったとみられる。死刑は確定したが、まだ未決囚扱いなので面会ができるということを伝えたかったのだ。
その直後、最後の面会となるだろうと私は車を松江刑務所に走らせた。
上田死刑囚は死刑確定にショックを隠せないようだった。
「なぜ死刑なのか、裁判所はどうなっているのか」
「いったい、どこをみて死刑なのか。裁判所だけはわかってると信じていたが」
涙を浮かべていた。
「再審もあるので、しっかりしてください」
という言葉を私は口にするしかなかった。
しかし、最高裁で判決が確定した以上、再審が認められるのは針の穴を通すより難しいとまで言われ、絶望的であることもわかっていた。
上田死刑囚には、一人の既婚男性の支援者がいた。
遠方に住んでいたが、松江刑務所まで毎月、上田死刑囚を訪ねていた。
私も支援者を知っていた。上田死刑囚からの手紙では、
<愛と勇気を届けてくれます>
<私の子どもの写真をずっとかわいいと面会でもながめていました>
と愛おしそうな文字で記されていた。
だが、死刑確定より前に支援者は亡くなった。上田死刑囚は、
<失った悲しみから立ち直れない>
と私につづっていた。
この支援者は私に対して、上田死刑囚のことを当初は「上田は」と呼び捨てしていたが、いつしか「美由紀ちゃんは」と話すようになった。
亡くなる直前、支援者は私に、
「機会があれば美由紀ちゃんの顔を見にいってやってほしい。何か差し入れも。かりんとうが大好きなんだ、美由紀ちゃん」
と話していた。亡くなったのはそれから間もなくのことだった。
面会時間は20分ほどだ。私は最後に、亡くなった支援者への思いを聞いた。上田死刑囚は、
「私の子どものお父さんになってもいい、なりたいと言ってくれました」