「最初はいくらか渡していたが、毎日のように『カネを』と電話がじゃんじゃんかかるようになった。そのうち会社に押しかけてきた。メールで『怖いやつをいかせるから、気をつけな』と露骨に脅してもきた。しつこいので『警察に行くぞ』と伝えたら、嫌がらせがなくなった」

 上田死刑囚が逮捕された後、この男性は、「自分も被害者になりかねなかった」と震えあがった。

「付き合っているとき、一度、風邪だといったら、薬をくれた。それを飲んで目が覚めたら、次の日の午後。12時間以上も寝てしまった。起きると頭はくらくら、気分は悪いし、体調が2、3日はおかしかった。事件を聞いて、美由紀ならと思った」

 裁判で上田死刑囚は無罪を主張したが、本人はほぼ黙秘を貫き、事件について語ろうとしなかった。

「鳥取連続不審死事件」がニュースになった時、よく使用されたのが、赤いTシャツ姿で何かを叫んでいるような上田死刑囚の写真だった。豊満な体形もあって、私は大柄な印象をもっていた。交際していた男性たちからも、上田死刑囚は身長150センチにも満たないが、体重80キロ以上、100キロくらいはあるという話も聞いていた。

 だが、実際に目の前に現れた上田死刑囚は、非常に小柄で驚いた。2012年11月、鳥取地裁の裁判で検察が死刑の論告求刑をした直後、私は初めて、上田死刑囚と面会した。鳥取刑務所だった。

 事件について聞くと、

「今は事件の細かいことは話せないが、無罪です」

 と消え入るような声で話した。

 上田死刑囚の法廷での主張は信用性がない、被害者2人への犯行手口は共通しているなどと断じられ、2012年12月、一審の鳥取地裁で死刑判決が下された。舞台は広島高裁松江支部での控訴審に移り、上田死刑囚の身柄も松江刑務所に移送された。

 そのころから私に、上田死刑囚から頻繁に手紙が届くようになった。何度面会に行っても上田死刑囚は事件については多くを語らず、

「うちはやっちょらん。殺しちょらん」

 と鳥取方言で犯行を否定し続けた。法廷での主張と同様に、当時交際していた男性の名前をあげて、「犯人だ」と言い張った。

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上田死刑囚からの手紙に書かれていたのは