国立がん研究センターのサイト「がん情報サービス」のがん統計によると、食道がんの2019年の罹患者数は2万6382人。飲酒・喫煙が主なリスク因子であり、男性に多いこのがんは、自覚症状がみられてから受診した場合、ほとんどが進行がんとして発見されます。しかし、近年では薬物療法などの進歩もあり、しっかりした治療計画を立てて臨めば進行がんでも根治を目指せる可能性は十分にあるといわれます。本記事は、2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。
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■リスク因子は飲酒・喫煙。高齢者にも増加
食道がんとは、のどと胃の間をつなぐ飲食物の通り道、「食道」にできるがん。食道は、上から「頸部食道」「胸部食道」「腹部食道」に分かれており、食道がんのなかで最も多いのは、胸部食道がんです。
男性に多く、50代から増え始め、近年では70代以上の患者も増えています。飲酒や喫煙と関わりが深いといわれ、「受動喫煙も大きなリスク因子になる可能性がある」と岡山大学病院消化管外科・食道疾患センター講師の野間和広医師は話します。
「ご家族がヘビースモーカーの人、飲食店で働くなど職業柄たばこの煙を吸いやすい環境にいる人などは高リスクです。夫が食道がんになり、その後、喫煙しない妻も同じく食道がんになった例もあり、環境因子も関連すると考えられます」
近年、喫煙者は減少傾向といわれますが、食道がんの患者数は緩やかに増加しており、その理由を野間医師はこう推察します。
「食道がんになった人には喫煙をやめて10年以上経っている人も多くいます。これは個人的な見解ですが、現在は吸っていなくても、何十年も喫煙を続けてきた蓄積の影響が大きいのではないでしょうか。現在20代、30代の喫煙や飲酒の習慣のない人が60代、70代になる時代には、食道がんが減少に転じている可能性もあるでしょう」(野間医師)