■栄養管理や嚥下リハビリなど、術前・術後のケアも重要

 食道がんの治療選択において迷うケースがあるとすれば、0期かI期と考えられます。

「0期で適応の内視鏡治療で病理検査の結果、がんを取りきれなかった可能性がある場合や、リンパ節転移の可能性がある場合などは追加治療が必要になります。その場合、『手術』か『化学放射線療法』、もしくはすぐに治療をしない『経過観察』かで迷う患者さんはいます。基本的には手術が勧められますが、患者さんのからだの状態や希望、医師の方針によっても選択は異なるでしょう」(同)

 また、I期は手術が第1選択ですが、その病期では手術と化学放射線療法による治療成績の差が小さくなりつつあり、選択に迷うケースも。その場合、患者の年齢、基礎疾患の有無、治療への意欲や考え方、ご家族のサポートが得られるかなどを総合的にみて選択されます。

 食道がんの手術は、食道を切除することでとくに術後早期は食事をとりにくくなり、体重減少や体力低下につながるなど患者の生活の質(QOL)への影響が大きいものです。そのため、手術などの治療に加え、栄養管理や体力回復のためのリハビリなど、術前から術後まで、長期にわたるサポートが必須です。今回取材をした二人の医師もその重要性を強調しており、それぞれが所属する病院では、術前から術後までチーム医療により患者をサポートする体制が整っていると話します。

 食道がんの治療を受ける患者一人ひとりに対し、医師、歯科医、看護師、栄養士、言語聴覚士や理学療法士といったリハビリスタッフなどでチームを形成。術前には筋肉量や体力を維持するための運動や栄養指導、呼吸リハビリなど手術に向けた準備をおこない、術後はのみ込み(嚥下)のリハビリ、栄養管理から心のケア、退院支援まで、フェーズごとに多職種が支援しています。

 食道がんでは術前化学療法をすることが多いため、その期間が有効活用されることになります。これらの取り組みが治療後の患者のQOLを左右するため、がんの治療実績があることに加え、食道がんの患者を支えるためのチーム医療の体制が整っている病院を選ぶことも重要です。

(文・出村真理子)

【取材した医師】
岡山大学病院消化管外科・食道疾患センター講師 野間和広 医師
大阪国際がんセンター消化器外科主任部長・食道外科長 宮田博志 医師

岡山大学病院消化管外科・食道疾患センター講師 野間和広 医師
岡山大学病院消化管外科・食道疾患センター講師 野間和広 医師
大阪国際がんセンター消化器外科主任部長・食道外科長 宮田博志 医師
大阪国際がんセンター消化器外科主任部長・食道外科長 宮田博志 医師

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