がんが粘膜の下の層にとどまっているI期は手術、進行がん(II期、III期)でも手術ができるからだの状態であれば手術が第1選択となります。進行がんでは手術の前に化学療法をおこなう「術前化学療法」が標準治療です。術前化学療法には、抗がん剤によりがんを小さくしてから手術に臨めることと、将来の再発予防という二つのメリットがあります。

 手術ができない場合や、患者が手術を希望しない場合は、化学放射線療法をおこないます。I期では、化学放射線療法と手術はほぼ同程度の治療効果が得られるという報告がありますが、進行がんでは手術のほうが根治性は高いというデータがあります。

 食道がんの標準的な治療法である手術では、がんのある食道と周囲のリンパ節を切除し、胃や腸で新たな飲食物の通り道を作る「食道再建術」が基本ですが、がんの場所によって、切除範囲などが異なります。

 頸部食道がんでは、がんの大きさや場所によって、食道だけでなくのど(咽頭・喉頭)も一緒に切除することがあります。胸部食道がんと腹部食道がんでは、食道に加えて胃の一部もしくは全部を切除します。

 現在では、多くの病院で胸腔鏡(または腹腔鏡)による手術がおこなわれるようになっており、ロボット手術も保険適用されています。

 手術のメリットは根治性の高さですが、一方で、食道や胃を切除することでその働きが損なわれるため、術後ののみ込み(嚥下、えんげ)や食事への影響は大きいといえます。化学放射線治療には、食道を温存できるメリットがありますが、副作用もあります。とくに放射線治療では、治療中からみられる副作用に加え、治療後数カ月、もしくは数年後に起こりうる「晩期障害」とよばれる副作用にも注意が必要だと野間医師は話します。

「治療によりがんが治っても、数年後に骨髄の病気や肺臓炎など、放射線治療による合併症が起こることもあるため、その点は患者さんにも十分に説明します」(野間医師)

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術前・術後の「チーム医療」によるケアが重要