日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、その店主が愛する一杯を紹介する本連載。埼玉県朝霞市にある塩ラーメンの名店の店主が愛する一杯は、名店を渡り歩いた店主の紡ぐ極上の自家製麺が光る一杯だった。
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■塩ラーメンは“スキマ産業”っぽい
2010年にオープンした埼玉県朝霞市の人気店「中華蕎麦 瑞山(ずいざん)」。東武東上線・朝霞駅の南口から徒歩10分の公園通り沿いにある。オープン当初から塩ラーメンを看板メニューにしており、埼玉エリアで塩の人気店として知られる。
塩ラーメンは数あるラーメンの種類の中でもかなり難しいラーメンといわれている。醤油や味噌ほど味がハッキリしていない上に、香りを出すのも難しい。単体だとしょっぱいだけなので、塩ダレとスープのバランスが肝になってくる。店主の初谷智久さんは塩ラーメンの難しさをこう語る。
「お客さんには自分のラーメンがどのぐらい響いているのかがしばらくわからなかったです。ですが、愚直にラーメンを磨き続けました。レシピも何度も変えました。ただ、長くやっているうちに醤油よりも差別化しやすいとも感じています。塩ラーメンはなんとなく“スキマ産業”っぽいですが、作り上げるのが大変だからというのはあると思います。盛り付けなどもかなり大事な要素ですね」(初谷さん)
初谷さんはチャンスが来たらすぐにそれに乗ってみるタイプで、店舗展開にも積極的だ。スナックのママからの誘いで東京都練馬区の平和台に支店を出店したかと思えば、埼玉県鶴ケ島市にあった名店の跡地にも出店。さらに、埼玉県新座市にある老舗「麺家 うえ田」の女将・上田みさえさんから、事業承継で店を引き継いだ。
店を増やしているのはスタッフのためだという。昔は修行して独立するのが基本的な流れだったが、今はそういう時代でもなく、新しい店を作ってチャンスを与えることで成長していくという流れもあるという。
「スタッフが育ったからお店が増えたんです。若いスタッフが店舗運営まで経験できればと思って増やしました。人には本当に恵まれています。スタッフたちが羽ばたいていったら、最終的には小さなお店が1つ残ればよいかなと思っています。基本的には『瑞山』を守っていくことが私の役割だと思っています」(初谷さん)
「瑞山」は多くの優秀なスタッフに支えながら、今日も各地でおいしいラーメンを提供している。そんな初谷さんの愛するラーメンは、名店出身の店主が北浦和で開いた人気店の一杯。小麦を誰よりも愛する自家製麺マニアの店主だ。