指名打者を導入した方がメリットだらけに見えるかもしれない。だが、指名打者がない野球の醍醐味もある。大きな魅力は、戦略上の緻密な駆け引きだろう。投手の代打起用が勝負のカギを握ることになり、その後の継投策を含めて監督の手腕が問われる。打撃のいい投手が、安打や長打を打つと、試合の流れは一気に変わる。森下暢仁(広島)、西純矢(阪神)、山崎伊織(巨人)は打撃センスに定評があり、西純は投手だが打力を買われ、昨年は8番でスタメン起用されていた。5月18日のヤクルト戦では2回に高橋奎二の150キロ直球を豪快に振り抜き、プロ初アーチとなる左越え2ラン。本業の投球でも1失点でプロ初完投勝利を飾った。投打で二刀流の大活躍はセ・リーグならではの光景だった。
SNS上ではセ・リーグの指名打者導入について、賛否両論の声が上がる。「DH制になったら野手の打席が200~300打席増える。それって育成においてかなり価値あるよなぁと感じる。リリーフでよく問題が上がる、常に準備してる状態っていうのはDH制ならかなり改善に繋がるよね。計画的に投手起用できるんだから」と支持する意見がある一方、「前提として野球は9人で対戦するものという思いがあります。反撃の良いタイミングで、例えば5回裏くらいなら、打者がピッチャーの場合、代打を出すのか、そのままピッチャーを打席に立たせるのか?その監督の判断を楽しませてもらってます。打席が弱いピッチャーにDHを導入するよりも、打席が弱いピッチャーも含めて、どのように『やりくり』するかを見るのが野球の面白さと思っています」という指摘も。
セ・リーグの指名打者導入の議論は、今後もしばらく続くことになりそうだ。(今川秀悟)