がんが進行すると、がんがあるほうの腎臓を摘出することもありますが、腎臓が一つだけになると腎機能は低下してしまい、「慢性腎臓病(CKD)」になる可能性が高くなります。残った腎臓の機能が低下して腎不全になると、人工透析などの腎代替療法が必要になることもあり、血液透析では週に3回の通院で透析を受けることになるため、生活の質(QOL)への影響は少なくありません。

■人工透析を受けている人は腎がんになりやすい

 慢性腎臓病で人工透析を受けている人も、腎がんを発症するリスクが高くなります。腎機能の低下が進むと腎臓が萎縮(いしゅく)する「萎縮腎」という状態になります。人工透析のうち、血液透析を長期間受けている患者は、この萎縮腎に嚢胞(のうほう)ができていく「多嚢胞化萎縮腎(ACDK)」になりやすく、ACDKには発がん物質が蓄積されやすいため、腎がんを引き起こしやすくなるといいます。

 ほかに腎がんを発症しやすい病気として、遺伝性の病気である「フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病」や「バート・ホッグ・デュベ(BHD)症候群」が知られています。日本泌尿器科学会作成の『腎癌診療ガイドライン』によれば、日本の疫学調査で「フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病」の患者のうち、50.3%に腎がんが発症するそうです。千葉大学病院泌尿器科講師の佐塚智和医師によれば、これらの病気を持つ人の腎がんは若年で罹患することが珍しくないとのこと。

「病気を持つ人の血縁者も腎がんが発症するリスクが高くなるため、該当する人には、早期発見を目的とした定期検診などのフォローアップを受けてもらうようにしています」

 ところで、冒頭で腎がんの罹患率は年々増加していると紹介しましたが、これは食生活の変化だけが原因ではありません。がん検診や人間ドックなどで見つかる早期の腎がんが増えていることも罹患率増加の要因と考えられています。

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