次に、腎がんの治療について。治療は手術が基本になります。その方法は大きく二つ。腎臓からがんだけを取り除く「部分切除」と、がんがある側の腎臓をすべて摘出する「全摘手術(以下、全摘)」です。

 部分切除はがんが4センチ以下の場合、標準治療となっています。腎癌診療ガイドラインでは4~7センチ以下のがんでも、転移があるなど、適応にあてはまらない場合を除いては、部分切除をすることがすすめられています。

【表の解説】「腎癌診療ガイドライン」では4~7センチ以下で、腎臓にとどまっていれば、部分切除が推奨されています。糖尿病や高血圧などがあり、腎機能が低下気味の場合は、腎臓の働きを維持するために、部分切除はメリットが大きいです。ただし、がんが腎動脈のすぐそばにある場
合などは手術で血管を傷つけると、腎臓の機能が保たれなくなってしまうことがあります。無理に部分切除をすると再手術になる可能性もあり、全摘にしたほうがいいかどうか、慎重に検討が必要なケースとなります。
【表の解説】「腎癌診療ガイドライン」では4~7センチ以下で、腎臓にとどまっていれば、部分切除が推奨されています。糖尿病や高血圧などがあり、腎機能が低下気味の場合は、腎臓の働きを維持するために、部分切除はメリットが大きいです。ただし、がんが腎動脈のすぐそばにある場 合などは手術で血管を傷つけると、腎臓の機能が保たれなくなってしまうことがあります。無理に部分切除をすると再手術になる可能性もあり、全摘にしたほうがいいかどうか、慎重に検討が必要なケースとなります。

■進行がんも、薬物療法の進化で手術が可能になってきた

 7センチ以上のがんは全摘が基本になります。これまでは開腹しての手術か腹腔鏡手術かの二択でしたが、2022年4月から、ロボット手術も保険診療の適応になりました。

 また、腎がんは他のがんとは異なり、たとえ転移があって手術で取り切れないとわかっていても、原発巣である腎臓を手術をすることが多いです。

「腎がんから分泌される産生物質を抑えることで、転移先のがんにも薬物治療や放射線が効きやすくなることがわかっているからです」(五反田医師)

 さらに、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの薬物治療が、腎がんの予後をよくしています。

「薬物療法は腎がん治療のゲームチェンジャーになりました。進行した腎がんでも、薬を使うことで長生きできるケースは増えており、当院でも手術後10年以上、お元気で過ごしておられるがんサバイバーの人が複数いらっしゃいます。今後も治療法の進歩にともない、腎がんの生存率はよりよくなることが、期待できると思います」(五反田医師)

(文・狩生聖子)

【取材した医師】
鹿児島市立病院 泌尿器科部長 五反田丈徳 医師
千葉大学病院 泌尿器科講師 佐塚智和 医師

鹿児島市立病院 泌尿器科部長 五反田丈徳 医師
鹿児島市立病院 泌尿器科部長 五反田丈徳 医師
千葉大学病院 泌尿器科講師 佐塚智和 医師
千葉大学病院 泌尿器科講師 佐塚智和 医師

「腎がん」についての詳しい治療法や医療機関の選び方、治療件数の多い医療機関のデータについては、2023年2月27日発売の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』をご覧ください。

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