武井塾長も、この見方には疑問を抱く。
「多少はその傾向もあるかもしれませんが、受験勉強においては大きな男女差は感じません。空間把握能力についても同じです。というのも実は、立体の問題を解くためには立体のまま考えず平面図形に落とし込んで考えるのが受験テクニックなのです」
確かに、受験算数ではつまずきやすい分野がある。たとえば抽象的な概念の入る割合などがそうだ。
理解できる子とできない子の差は何か。
「両者の線引きはごくシンプルです。公式を暗記するなど表面的な勉強をするクセがついた子と、その奥の原理にじっくり向き合う子の差です」
武井塾長は、算数に対する性差があるとすれば、「取り組み方」にあるという。生徒を長年見ていると、女の子は周囲の人間によって成績が左右されやすい傾向が強いと感じるからだ。
「算数が苦手」と話す女の子の話をじっくり聞いてみると、「昔、算数の先生に嫌なことを言われて嫌いになってしまった」など“人”に関するマイナスの体験があることが多い。女の子は、「その先生が嫌いだからその科目が嫌いになった」といったパターンが少なくないという。
「塾では、授業の質は当然ですが、生徒にかける言葉や表現に気を使うように注意しています。講師に悪気がなくとも、傷ついてそれが原因で算数が嫌いになることがあるためです。特に女の子は多い」
だが、たとえ算数に苦手意識をもつ女の子がいてもそれほど問題にはならない、と武井塾長は付け加える。
「模試は男女混合の競争ですが、本番の中学入試は違います。トップ校や難関校でも、女子校の入試では、男子校より算数の難易度は低めです。共学でも試験の合格枠は男女別です。入試は算数マニア度を競う場ではない。基礎となる土台が定着していれば、忘れないように地道に復習を続けることが大切です。ずば抜けて得意にしなくても、そこそこできるようにすればよいのです。そして国語に秀でた子はたいてい理社も得意です。4科目のバランスが良いタイプは、中学受験では有利です。深刻に思いつめる必要はありません」