そのあと、三女の末娘、6歳の真結羽ちゃんが土俵下から父を見上げてマイクを握り挨拶をするのです。手紙を読むことなく。挨拶をしたのです。

「お父様、現役生活お疲れ様でした。最後のお相撲のことははっきりと覚えています。あの時のお父様は誰よりもかっこよくて、誰よりも輝いていました。

 今、目の前に立っているお父様はまげがないから、ちょっと不思議だけれども前より優しい顔をしています。前はまげがあって頭を触れなかったけれども、もうまげがないからお父様が頭をなでなでしてくれた分、わたしがお父様の頭をい~っぱいなでなでしてあげます。

 世界で一番、優しくてかっこいいお父様でいてください。世界で一番愛してるよ。

 大勢の皆様、お父様の断髪式におこしいただいて、ありがとうございました」

 紗代子さんの涙に続き、この娘さんの挨拶。もう僕の涙腺は崩壊しました。周りの人もかなり泣いていました。

 そして最後の最後に宮城野親方はみんなに向けて挨拶をすると、なんと、土俵に膝をつき、頭を下げたのです。そして額を土俵につけました。白鵬として、お世話になった土俵に感謝の思いを伝えたのでしょう。

 その姿に、出きったはずの僕の涙がさらに出てきてしまいました。

 断髪式まで全力でやり切った第69代横綱・白鵬。これからの宮城野親方としての姿を楽しみにしてますし、ずっと応援していきます。

 お疲れさまでした。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中。       

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