■片目をつぶって眼の状態を把握

 網膜疾患の治療はどのようにおこなわれるのでしょうか。治療には、薬物治療と手術があります。近年増えてきている薬物療法が、VEGFという網膜症を悪化させる物質の作用を抑える抗VEGF薬を眼内に注射する治療です。先述した病気のうち加齢黄斑変性や網膜静脈閉塞症などでおこなわれています。

 また、網膜にレーザーを当てて血の巡りの悪い虚血部分を焼き、悪さをするVEGFの産生を抑えるレーザー光凝固術は、糖尿病網膜症でおこなわれています。

 一方、すぐに手術が検討されることが多いのは黄斑円孔や網膜剥離などです。網膜剥離の術式には、硝子体手術と強膜バックリング手術があります。どちらも網膜の穴を塞ぎ、網膜を元の場所に戻すものです。

 園田医師は受診すべきタイミングが遅れないよう、次のようにアドバイスをしています。

「とくに網膜剥離については、過去に『もう少し早く来ていただければ』と感じたケースがたくさんありました。人は何か症状があっても両目で見ていますので、反対側の視力でそれを補いがちです。両目で見ていて気づかず、受診が遅れてしまった患者さんがいました。症状を感じたら、片目をつぶると状態が分かりやすいです。ほかでは、視野が欠ける症状を軽く考えていた患者さんや、コロナ禍で病院に行きづらく受診が遅れてしまった場合などです。早く受診すれば、からだに負担の少ない手術ができますし、良い視力を継続できるケースは多いです。日頃から視力に関心をもっていただくことが大事です。ぜひご自分の眼を大切にしてください」

(文・小久保よしの)

【取材した医師】
愛知医科大学病院 眼科教授 瓶井資弘 医師
九州大学病院 眼科教授 園田康平 医師

愛知医科大学病院 眼科教授 瓶井資弘 医師
愛知医科大学病院 眼科教授 瓶井資弘 医師
九州大学病院 眼科教授 園田康平 医師
九州大学病院 眼科教授 園田康平 医師

「目の疾患」についての詳しい治療法や医療機関の選び方、治療件数の多い医療機関のデータについては、2023年2月27日発売の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』をご覧ください。

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