愛知医科大学病院眼科教授の瓶井資弘医師はこう話します。
「視界で糸くずやゼリーのような丸いものがふらふらと動いて見える飛蚊症は、9割以上は年齢にともなう生理的なものですが、ほかの病気になっているケースがあります。飛蚊症が増えたなと思ったら受診してください」
■50代以降の人は眼の主治医をもつ
とくに注意したいのは、網膜が眼底から剥がれてしまう網膜剥離。放置すれば失明する可能性が高いためです。緊急で手術が必要な場合が多く、術後に視力が残るかどうかは、黄斑の中心部の視細胞の損傷度合いによります。中高年は進行が比較的早い特徴があります。
視界が薄暗くなったり、薄いベールや水たまりがかぶさったように見えたり、飛蚊症が急に増えたりしたら急いで眼科へ行きましょう。
「50代以降は、みなさんが必ずどこかで眼の病気にかかったり不調に悩まされたりするものです。そのため50代以降の人には信頼できる眼の主治医をもつことをおすすめしています。基本的に眼科専門医であることが大切です」
そう話すのは、九州大学病院眼科教授の園田康平医師。眼科専門医は日本眼科学会の公式サイトで紹介されています。
■眼底検査の新しい機器が広まっている
診断では、まず瞳を開かない状態で観察して、視力検査、眼圧検査、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査をおこない、その後に瞳孔を開いて眼底検査をするのが一般的です。
眼底はからだのなかで直接血管を観察できる唯一の部位で、眼底検査は重要です。近年、大きな病院を中心に導入されつつある検査機器は主に二つあります。
一つが、瞳孔を広げる点眼液(散瞳剤)を使用せずに、従来の眼底カメラに比べ広範囲の撮影が可能になった「超広角眼底カメラ」。
もう一つが、従来の光干渉断層計(OCT)に眼底カメラがついた、眼底の血流を描出する「OCTアンギオグラフィー(OCTA、光干渉断層血管撮影)」です。造影剤を使用せずに血球の動きを追うことで網膜の血液の流れを評価するため、造影剤による薬物アレルギーなどのおそれがなく、腎臓病の患者や高齢者でも安全に、短時間で検査ができます。また、OCTAでかつ広角撮影ができる「広角OCTA」も一部の病院で導入されています。