渡辺優樹、小島智信両容疑者をフィリピンから移送し、日本に到着した航空機=2023年2月9日午前4時59分、羽田空港
渡辺優樹、小島智信両容疑者をフィリピンから移送し、日本に到着した航空機=2023年2月9日午前4時59分、羽田空港

 自身は犯行グループ内で、「田中」という偽名を使っていた。受け子らと連絡を取り、それぞれの犯行後にファストフード店やパチンコ店の駐車場などで現金を受け取り、渡辺容疑者らにつながる人物に渡す二次回収役を担った。

 犯行場所は、大阪や京都、奈良、千葉、神奈川など広域にわたり、Aさんはその都度現金を回収に行き、運搬した。マニラに滞在しながら受け子らと上位者とのやりとりを仲介したり、勤務状況を把握してフォローしたりもしていた。実際の犯行についても、準備の指示や手口を教えるなどもした。

 一方、渡辺容疑者との交際は続けていた。

 Aさんが起訴された14の事件では、7人の被害者から計1千万円を超える額をだまし取った。

 裁判でAさんは振り込め詐欺の認識はなかったと主張したが、判決では「犯行グループで重要な役割を果たし、犯行は悪質、刑事責任は重大」として、懲役4年6カ月(求刑7年)が言い渡された。

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裁判所の決定文書を報道陣に見せるフィリピンのレムリア司法相=2023年2月7日
裁判所の決定文書を報道陣に見せるフィリピンのレムリア司法相=2023年2月7日

 渡辺容疑者とAさんを知る人物がこう話す。

「Aは東京で有名な飲食店に勤務していました。友人から『フィリピンに旅行して男性と付き合えばお金になる』と言われてマニラに飛んで行ったようです。店では売れっ子だったらしく、渡辺容疑者はAさんの美貌(びぼう)にぞっこんとなり、男女の関係に。日本で1千万円を超えるカネを受け取り、きちんと手渡すなど『信頼できる』となって、渡辺容疑者はフィリピンにもカネを運ばせたんです。Aがフィリピンにくると渡辺容疑者は、カネも女も来た、と上機嫌でした」

 ある捜査関係者は、

「Aさんはフィリピンでの渡辺容疑者の滞在先や動きをよく知っていて、その情報が役に立ち、渡辺容疑者の居所をつかんで当局が踏み込んだ。一回、フィリピンに行くたびに数千万円は運んでいたようで、億単位になると見られる。それほど渡辺容疑者から信頼を得ていた」

 と打ち明ける。

 先の判決では、渡辺容疑者が指揮する犯行グループについて

「グループはフィリピンにも拠点を置き、多数の者が関与して、組織的かつ計画的に敢行された犯罪であり、その犯行態様は巧妙である」

 と言及している。

 今回の渡辺容疑者ら4人の逮捕で、事件の全容解明はなるのだろうか。

(AERA dot.編集部 今西憲之)

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