遊びゴコロ満載の食リポで、町中華ラバーを増やし続けている北尾トロさんと下関マグロさん。北尾さんは「町中華探検隊」の隊長、下関さんは副長を務める。今回は、2月7日発売の『東京・大阪 名店の味が再現できる!ひみつの町中華レシピ』に収録された対談を全文公開。あらためて町中華の魅力を語ってもらうはずが、対談は、失われゆく町中華への危機感を吐露するところから始まった。
下関マグロ 僕たちが町中華を食べ歩くようになったのは、2013年の暮れに昔から通っていた高円寺の「大陸」が閉店したことがきっかけ。トロさんに知らせたら「ああいう町中華はどんどんなくなるね」と言われたんだけど、その時初めて「町中華」という言葉を聞いたの。
北尾トロ 僕よりちょっと年配の人が、「安くて庶民的な店」という意味で使ったのを1回だけ聞いたことがあって。「そういう言い方があるのか」「すごい言葉だ」と思ってた。ただいつも一人で食べに行っていたから、使うチャンスがなくてね。いざ使ったら、マグロさんがすぐに「何それ?」とツッコミを入れてくれて、2014年からは2人で「あれは町中華?」「先生、どうでしょう」なんて言い合う遊びをするようになったんだよね。「駅からちょっと遠いから違う」とか、基準は適当だったけど(笑)。
マグロ そして同じ年の8月にも衝撃的な出来事が起きた。やはりずっと通っていた新宿の「来々軒」が閉店してしまったんだよね。
トロ おじいさん店主が、重い中華鍋を力強く振るっていたっけ。中華料理屋なのに「当店の名物料理はオムライス」と言っていたのが面白くて。
マグロ あのオムライスは本当に美味しかった……。その時も「やはり町中華と別れる日は突然やって来る」「今行かないと」と思って、僕たちはますます焦った。長くやっている店ほど、作る人が年配の方ばかりだからね。
◆僕たちが思う「町中華」の定義
マグロ 僕たちと同じように思う人が集まって「町中華探検隊」になり、今ではメンバーが99人(取材時点)。2015年に3番目に加わった増山かおりさんの働きで、ワイドショーでも取り上げられるようになってからは、より世間に広まったね。