龍朋(東京都新宿区)は創業1978年。名物メニューのチャーハン(800円)は1日に300食売り上げる。『ひみつの町中華レシピ』で作り方を紹介している(撮影:菅朋香)
龍朋(東京都新宿区)は創業1978年。名物メニューのチャーハン(800円)は1日に300食売り上げる。『ひみつの町中華レシピ』で作り方を紹介している(撮影:菅朋香)

トロ 神楽坂の「龍朋」にもよく行った。チャーシューゴロゴロのチャーハンが美味しくて、作家の平松洋子さんは飲んだ後にわざわざ食べに行くと言うくらい。女将さんも素敵だよね。「ここ座んな」って、威勢よく仕切ってくれるのが気持ちいい。

マグロ 町中華に行ったら、女将さんに従っておけば間違いない。

トロ 「何がいい?」と聞けば、「これにしときな」って決めてくれるからね。

マグロ それと学芸大学の「上海菜館」には、泣けるエピソードがあるよ。今の店主が、一緒に店を継いで修業するって時に親父さんを亡くして、何も教えてもらえなかったらしい。

トロ つまり独学で作ってきたの?

マグロ 独学で。悩むと親父さんが夢に出てきて気力をもらうらしく、今では100品ほど作れるそうだよ。看板女将のお母さんに「旦那の味を超えた」と言われた時には、泣くほどうれしかったとか。

餃子の店 おけ以(東京都千代田区)では、ほとんどの客が餃子(600円)を注文。白菜たっぷりでにんにく不使用。究極の「パリッじゅわ~」が楽しめる(撮影:魚住貴弘)
餃子の店 おけ以(東京都千代田区)では、ほとんどの客が餃子(600円)を注文。白菜たっぷりでにんにく不使用。究極の「パリッじゅわ~」が楽しめる(撮影:魚住貴弘)

トロ どのお店にもいい話がある。飯田橋の「餃子の店 おけ以」も、お店を閉めようと考えた時に、出入りの内装業者だった人が「この美味しい餃子がなくなるのは惜しい。俺にやらせてくれ」と言って、今の店主になったんだよね。

マグロ あと浅草の「博雅」もおすすめ。元ミス日本の女将さんが素敵なのと、旦那さんが作るチャーハンがすごく美味しい。注文分をまとめて作る店が多いなか、ここは1人前ずつしか作らないんだって。理由を聞いたら、「きちんと同じ味を提供するため」と言っていた。

トロ 素晴らしい。

博雅(東京都台東区)の隠れた名品は、野菜炒め(770円)玉子のせ(プラス110円)。先代の時代に常連客のリクエストに応えて作ったものだという(撮影:キムラミハル)
博雅(東京都台東区)の隠れた名品は、野菜炒め(770円)玉子のせ(プラス110円)。先代の時代に常連客のリクエストに応えて作ったものだという(撮影:キムラミハル)

マグロ それと今はないお店だけど、西荻窪の「大宮飯店」にあった「ちゃんぽん」がもう一度食べたい。ちゃんぽんを見たことも食べたこともなかったご主人が、想像で作ったメニューなんだって。

トロ 「20年くらいうちの人気メニューだよ」と言っていたね(笑)。あれには度肝を抜かれた。アスファルトのように敷かれたどろ~んとした餡かけの上に、ダメ押しの溶き卵がのっていて……。

マグロ 「ちゃんぽん」という語感からいろいろな物が入った料理をイメージしたんだろうね(笑)。「長崎ちゃんぽん」がブームになった時に町中華が取り入れたらしく、実はどの店にもあったりする。

トロ たいていメニュー一覧の真ん中くらいに書かれているから、気づかない人も多いはず。東京では体系化されていないからこそ店によって味も見た目も違うので、食べ比べたら面白いと思う。

◆お店に呼ばれる瞬間が来る

トロ 僕は自分で作ることにも興味が出てきてる。昨日は深夜の2時に、家でチャーシューを作ったよ。スーパーでブロック肉が割引になっていたから、なんとなく買っちゃって(笑)。今朝はそれでチャーハンを作ったんだけど、味は美味しかったのにちょっとかたかった。圧力鍋にかける時間が短かったみたい。

マグロ チャーシューの煮汁はとっておいて継ぎ足すと、町中華の味になるよね。

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