キックと言えば馬場さんの16文キックも相当痛かったよ。動きがゆっくりだからそうは見えないかもしれないけど、あれだけの巨体の全体重が乗ったキックだからね、見た目よりもダメージがキツイんだ。あとはなんだかんだで、脳天唐竹割。あれは痛かったね。頭のてっぺんの骨を尺骨のボコっとなっているあたりでガンって叩くからね。あれは痛かった!
ほかの選手の技でカッコいいと思ったのは、初代タイガーマスクのローリングソバットや空中殺法と長州力が使っていたサソリ固めだ。初めてタイガーマスクを見たときはキレイな動きでカッコいいと思ったもんだが、時々トップロープに登ろうとしてすべったときは「ざまあ見ろ!」と喜ぶようになってしまった(笑)。
長州のサソリ固めもそれ自体というより、技に入るまでの一連の流れがカッコよかったよね。長い髪をゆさゆさと揺らししながらズバッと技に入るのはひとつの絵になっていた。俺も髪を伸ばして長州みたいにやればよかったかな?(笑)
(構成・高橋ダイスケ)
天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。