「嗅覚障害」の原因は、かぜ、ウイルス感染、花粉症、乾燥、ストレス、鼻炎などさまざまだといいます。匂いに鈍感になると食事のおいしさを感じにくくなり、食べ物の傷みやガス漏れなどの異常に気づかないなどといった心配も。日常生活にも直接影響する不調なので、早めの対処で慢性化を防ぎましょう。この記事では、日本の漢方のルーツである中国の伝統医学「中医学」にもとづく【嗅覚障害対策】を紹介します。
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■鼻のトラブルは「肺・脾胃(ひい)・腎」の不調から
匂いが分かりにくい、匂いの感じ方が今までと違う……。嗅覚障害は、こうした「匂いの感覚」に異常がある状態のこと。その原因となるのは、匂いを感じるメカニズムに起こる異常です。
匂いは、鼻の奥にある「嗅粘膜(きゅうねんまく)」に匂いの成分が届き、「嗅神経」を通じて脳に伝わることで感知されます。この仕組みのどこかに問題が起こると、匂いの感覚に異常が起こります。
例えば、鼻炎などで鼻の通りが悪くなると、嗅粘膜まで匂いの成分が届きにくい状態に。また、ウイルス感染や薬の影響で嗅神経がダメージを受けたり、頭のけがや脳の病気で脳への伝達に障害が起きたりすることもあります。
中医学では、鼻は「清らかな気の通る穴(清竅:せいきゅう)」とされ、「気(エネルギー)」がスムーズに巡っていれば鼻の通りもよく、匂いもしっかり分かると考えます。一方、気の停滞や鼻水、乾燥などで鼻の働きが弱くなると、嗅覚にも異常が現れるようになります。
こうした鼻の状態は、気の生成や呼吸と関わる「肺」、水分代謝を担う「脾胃(胃腸)」、潤いの源となる「腎」の不調が主な要因に。また、かぜや花粉症、ストレスから嗅覚障害を招くこともあります。
鼻は匂いを感じると同時に、呼吸を担う器官でもあります。空気中の異物やウイルスの侵入を防ぐ大切な役割も担っているため、不調があればきちんと対処することが大切です。