「ケイコ 目を澄ませて」の完成披露試写会で。「岸井さんはスタッフ全員の名前を覚えて、ロケハンにも付き合ってくれた。映画を作るという行為が、本当に好きなんだなと思った」(監督・三宅唱)(写真=品田裕美)
「ケイコ 目を澄ませて」の完成披露試写会で。「岸井さんはスタッフ全員の名前を覚えて、ロケハンにも付き合ってくれた。映画を作るという行為が、本当に好きなんだなと思った」(監督・三宅唱)(写真=品田裕美)

■夢中になったドラえもん 昔の世界に思いを馳せる

 あれから3年。気づくと映画にドラマに彼女を観ない日はなくなった。22年だけで映画5本、ドラマ4本、舞台1本で主演やヒロインを務めた。話題のドラマ「アトムの童」もクライマックスを迎えたばかりだ。

 テレビプロデューサーの佐久間宣行(47)は、岸井の魅力にいち早く気づいた一人だ。12年、劇団「ハイバイ」の舞台で魅了され、テレビ東京のコント番組「SICKS~みんながみんな、何かの病気~」にヒロインとして起用した。

「最初に魅力を感じたのは声ですね。あと身体能力。静かな芝居をしても、内側にマグマみたいなエネルギーを感じさせる人だと思います」

 演技のポテンシャルだけでなく、本人の映画や演劇への情熱にも驚かされた。

「受け手としての感覚が優れているから、良い作品を選んで、コメディーからシリアスな役まで幅広くこなしてきた。その幅がこの多様性の時代に、より多くの人に求められているのだと思う」

 本人は取材が苦手、とフォトエッセイに書いていた。やや緊張してインタビューの場に行くと「最近、みなさんに言われるんです! ほんと、すみません!」と、恐縮しながら破顔する。150センチの身長は、実際に対面すると小柄と感じない。

「いや、いま20センチのヒールを履いているんで! ほんとはもっとちっちゃいんです。整体に通ってO脚と首を治してやっと150超えです」

 と、正直で屈託がない。同行した編集者が差し入れたマカロンに「うわあ!」と目をこぼれんばかりに見開いて喜んでくれる。過去の出来事や最近観た映画について生き生きと、ときに声まねを交えてユーモラスに語ってくれるので、いつまでも聞いていたくなる。うわ、友達になりたい。ずうずうしくもそう思ってしまう人だ。

「子どものころですか? なにしてたかな。人より体が小さいので、わりとなんでも人一倍、練習しないとできなくて」

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