しかし、バーチャルミックスゾーンでも高橋の表情は曇りがちだった。

「体は全然大丈夫だったのですが、メンタル的にかなり……本当に笑えない。今は笑っていますけど、笑えないほどショック」

 体力面での影響を否定した高橋だが、リズムダンス後には高地特有の難しさについて「練習中はそんなに感じなかったのですが、本番でリズム(ダンス)を通してやると、いつもと違う疲れという感じはあったので、そこはやはり標高(によるもの)なのかなと思います」と語っていた。リズムダンスよりも長いフリーダンスでは、さらに消耗が激しかったのかもしれない。36歳の高橋が競技の第一線で滑り続けていること自体、驚異的なのだ。

 二人は、3月にさいたまスーパーアリーナで行われる世界選手権に出場する。村元は「本当に課題はたくさんある」としながらも、自信ものぞかせた。

「今大会、現地に入ってくる前はすごくいい練習が積めていて、試合をする準備はできていたので。そのままの練習をこれから1カ月半、特に『ここ』というよりは、全体的に滑っていくだけなのかなと思っています」

 今大会で印象に残ったのは、お互いを労わり合う村元と高橋の姿だった。辛い試合を乗り越えた二人は、一体感を高めて世界選手権に向かっていく。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」