放送作家の鈴木おさむさん
放送作家の鈴木おさむさん
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 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、映画「エゴイスト」について。

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 今日は2023年、本当に色んな世代の人に見ていただきたい公開中の映画を一つ、お勧めします。

 エッセイスト・高山真の自伝的小説を、松永大司監督が映画化した「エゴイスト」という映画です。現在公開中です。

 あらすじを言うと、14歳の時に母を亡くした浩輔は、田舎町でゲイである本当の自分を押し殺して思春期を過ごし、現在は東京でファッション誌の編集者として働きつつ自由気ままな生活を送っている。この浩輔が鈴木亮平さん演じる主人公。浩輔はある日、パーソナルトレーナーの龍太と出会う。龍太を宮沢氷魚さんが演じています。浩輔と龍太は互いに惹かれ合っていくのですが・・・という物語。

 僕が最初にこの映画の存在を知ったのは映画館に置いてあったチラシでした。チラシには鈴木亮平さん演じる浩輔と宮沢氷魚さん演じる龍太の二人がキスをしている、とてもインパクトあるものでした。

 とても気になる作品ではありました。先週、東京FMの自分のラジオ番組に松永監督が来てくれるということでこの作品を見ました。正直、松永監督が来てくれなければ、配信になった時に見ていたと思います。そう思っていた自分を大説教してあげたくなるとんでもない傑作映画でした。

 まず、鈴木亮平さんの役への執着。とんでもない役作り。ゲイの友達と話すシーンがあるのですが、監督に聞いたところ、役者さんではなく、ゲイの人たちに出演していただき、まず鈴木亮平さんと一緒に2時間以上喋ってもらう。その会話の中でポイントとなったところをメモにして、それぞれに渡す。

 それをもとに演じてもらうのだが、20分以上撮影して使用したのは数分。でもその数分が、演技を超えたリアリティーがあります。ドキュメンタリーを見ているような。松永監督はこれまでドキュメンタリーでも名作を撮っているので、その手法もまたおもしろい。

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「家族の形」を感じてほしい