そして、浩輔と龍太の愛を育む時のリアリティー。これがもうすごい。見ているこっちが緊張する。

第45回日本アカデミー賞で最優秀助演男優賞を受賞しあいさつをする鈴木亮平=2022年3月11日、代表撮影
第45回日本アカデミー賞で最優秀助演男優賞を受賞しあいさつをする鈴木亮平=2022年3月11日、代表撮影

 ・・・と、物語は後半になり大きく変わっていく。この映画には、僕が名前のわかる役者さんは3人しか出ていなかった。鈴木亮平さん、宮沢氷魚さん。そして阿川佐和子さんです。

 阿川さんは宮沢氷魚演じる龍太の母親を演じているのですが、この役を阿川さんに頼んだところがすごい。とんでもない演技をしております。

 松永監督は阿川さんの演技をしない演技を求めていたらしく、演技をしようとすると、そこにNGを出していたそうです。だからこそのリアリティー。

 この龍太の母親と浩輔の物語が描かれていくのですが・・・僕はこの後半部分に、かなりやられてしまいました。最後は号泣。エンドロールの最後の最後まで涙が流れていた。

 世の中には様々な「家族」がいます。いろんな家族の「形」があります。僕は数年前に父を亡くしましたが、そこで初めて気づけた「家族」の形がありました。

 この映画は見る年代によって感想が変わっていくと思います。僕のように50歳を過ぎて、親とお別れしたり、様々な悩みを持っている人たちこそ、この映画を見てほしいと思うのです。映画の構造上、このことをあまり宣伝できないのも分かります。

 だからこそ、見てほしいと思うんです。

 見終わった後に出てくる「エゴイスト」の文字に、タイトルの印象が変わっていく。

 この映画を見て「家族の形」を感じてほしいです。

 あ、浩輔が阿川さん演じる母親に「あるもの」を渡すシーンの緊張感、すごいです!!

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中。作・演出を手がける、今田耕司×鈴木おさむの第8弾舞台『正偽の芸能プロダクション』が3/15(水)~19(日)よみうり大手町ホールにて上演。

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