写真はイメージです(Getty Images)
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、女性への加害欲について。

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「わからせ」とか「男女平等パンチ」とか「ひととき融資」とか……女性への加害欲を隠さない言葉が、「隠語」のような形で広まっている。「わからせ」「男女平等パンチ」については本連載で書いてきたが、要は「“生意気な女”を暴力で黙らせたい」男たちの言葉。一方、「ひととき融資」は、「女の弱みにつけ込みたい」と考える男たちの性購買の一種です。あーあ、憂鬱になりますね。

 お金に困った女性(その理由は様々。金融機関から借りられなかったり、家族に知られたくない借金があったりする場合なども多い)たちに、お金を貸し、元金はもちろんのこと、性行為と法外な利子を求める行為だ。「ひととき融資」という言葉の語源は、「ひととき体の関係を持つ」という意味や、人と木=「人」+「―」+「木」=体、という説もあるらしいが、よくもまぁ、こんな言葉を次々に思いつくと言葉を失う。まるで女性虐待を面白がって命名する部署がこの国のどこかにあるのでしょうか。

「ひととき融資」で検索すると、女性からの相談がいくらでも出てくる。ネットで出会った人に20万円借りたが、高額な利子に加え、セックスを要求される。性行為の要求がきつい、性感染症に感染した、激しいSM行為で傷を受けた、あまりに気持ち悪くて断ったら写真を公開すると脅された、などの被害に溢れている。古くは1990年代の「援助交際」から最近の「パパ活」などまで、男性の性購買を「対等な交渉」のように使う言葉がいくつもつくられてきたが、中身は一貫して同じ、金の力を借りた性搾取。とはいえ「ひととき融資」までくると、女性に残るお金は一銭もなく、ただただ何の根拠もない「利子としての性行為」を強いられるだけだ。

 先日、新宿・歌舞伎町を久しぶりに歩いた。歌舞伎町に向かう区役所通りの入り口では、こんなアナウンスが繰り返し流されていた。

「マッチングアプリで出会った女性と一緒に行ったお店で、気がつくと女性はいなく、法外な料金を支払わされるケースがあります。見知らぬ女性にはお気をつけください。席に座ったら支払い方法を確認しましょう」

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「新しい歌舞伎町の景色」を見た