ホストクラブが入り口になり、1000円だけと言われていたのに、いろんな理由をつけられ、若い女性には支払えない金額を言われたときは、学生証などのデータを取られているので、店側の言いなりになってしまうケースは少なくないという。大丈夫かな……と思いつつ、私は自分が10代だったらどうするんだろうと、その様子をボーっと見ていた。初めての歌舞伎町で冒険してみたい気持ちもあるのかな……でもそこは危険なんだよ……というか、路上の客引きは条例違反のはず!と心の中でつぶやいていた。すると……私の横にいた友人が、「見てらんない」という感じで、女性たちと客引きの男性の間にすーっと入っていったのだった。「あっぶないよーん!」と手をヒラヒラさせながら。ほんとに、勇敢な女友だちが一人いいれば、世界の景色を変えられるという瞬間だった。
小柄で威圧感を与えない彼女が、女性たちに明るい感じで声をかけはじめた。「ホストクラブに誘われてるの?」「ホストクラブが入り口になって怖いことになる話が増えてるから気をつけてね!」「あっぶないよー」。その様子を私はただあっけに取られて見ていたのだが、今度は私の隣にいた別の女友だちが、「私も行くわ」と同じく女性たちと男性の間に立った。彼女は山のように大きいうえにファーを着ていたのでかなりの圧をかもしだしながら「どこから来たの? え、○○県? もしかして歌舞伎町は初めて? 大学生なんだ、エー18歳? やめなよ~、あぶないよ~、だいたい、フツーのお店でマイナンバーカードなんて要求しないよね~」と話しかけだしたのだ。
そうなると、私たちも動かざるを得ない。羊たちの沈黙状態だった私もそろりそろりと女性2人に向かい、一緒にいた女友だち数人が女性たちに声をかけはじめた。客引きの男性は「仕事、邪魔しないでくれる?」と突然現れたおばちゃん集団にひるみながら言うのだが、別の女友だちが「キャッチ(客引き)は条例違反って、そこに書いてあるけど」と言うと、「キャッチしてません、声がけです、違反じゃないです」とモゴモゴ言うのだった。結果的に数の力は大きいのか、女性たちをその男性から私たちは引き離すことになった。