聞けば、彼女たちは地方から上京した大学1年生。初めての歌舞伎町で声をかけられ怖かったけど断れないどうしよう……と思っていたところだった、とのことだった。かなりしつこく勧誘されるので、1000円だし、ま、いいか、と決めようとしたところにおばちゃん登場、という感じだったらしい。ものすごいしつこいナンパや、ものすごいしつこい客引きに、「うるせーな!」「ほっておけ!」と啖呵を切れるような訓練をこの国の女性たちは受けていないので、まず話を聞いて、ニコニコ笑い、相手を怒らせないようなタイミングでフェイドアウトできるかどうかを探りながら、結局フェイドアウトできずに……というような経験をする人は少なくない。キラキラするネオンは魅力的で、そのドアの向こうには何があるのか知りたいという気持ちも、若いときはきっとあるのだろうと思う。そこは危険よ!という女たちのお節介こそ「うっせー」と思う人もいるだろう。それでもこの国は、「女を買う」ことがあまりにも当たり前になり、そのために「女から奪う」ことも当たり前になっている。そしてそのことに罪悪感をもたないで済む価値も生まれている。「これは俺たちの仕事ですから」「仕事を奪うな、邪魔するな」という経済の論理で。

 極寒の2月の歌舞伎町。冷たい夜の空気にネオンは美しく光っているのだけれど、この街でつくられる無数の痛みを打ち消すための過剰な光にも見えてくる。せめて、優しい寝床と安全な関係を、女性たちが信じられますように。そう祈るしかない、かなり無力な私を自覚している。

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