続く3回転ルッツ―3回転トウループも高さと幅のある完璧なジャンプで、着氷時の姿勢も美しい。繊細な旋律に合わせて緩急をつけるスケーティングでも魅せ、スピンやコレオシークエンスはすべてレベル4、4回転トウループ以外のすべての要素で1以上の出来栄え点を得ている。滑り終えた島田はラストのポーズで頭上に上げた両手を振り下ろし、力強いガッツポーズをみせた。
リンクサイドで濱田美栄コーチに抱きかかえられた島田は、そっと目元を拭っている。フリーの得点は152.76、合計点は自らが持つシニアも含めての今季最高得点217.68を7点近く上回る224.54というハイスコアだった。
中央に座った記者会見で、島田はキスアンドクライでも流し続けた涙の理由を問われている。
「今まで(大技のトリプルアクセルと4回転トウループが)二つ、両方決まらなかったり、一つだけ決まったり、練習でも思うように跳べなくて、結構辛かった時もあったのですが、今回は跳べたので、その嬉しさです」
島田と中井の大健闘により、今大会は「2」だった日本女子の出場枠は、来季は最大の「3」になった。初の大舞台で二人が力を出し切れたのは、ハイレベルな日本のジュニア女子の中で切磋琢磨してきたからだろう。トップへの登竜門である世界ジュニアで、日本代表の二人は自らの手で未来への道を切り開いてみせた。(文・沢田聡子)
●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」