


日本の医学部ではなく、海外大を選択する学生が増えている。日本との違いや魅力は何か。AERA2020年3月2日号から。
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医学部から海外の大学を選択する学生も増えてきた。日本の医学部と海外の医学部では、カリキュラムも異なる。
吉田いづみさん(25)はハンガリーのブダペストにある国立センメルワイス大学医学部の5年生だ。センメルワイス大はノーベル賞受賞者など、国際的に活躍する研究者が輩出している。
「英語で学べ、いろいろな国の学生とふれ合えることが魅力でした。学費も年間180万円と手頃なのもありがたかった」
大学では3カ月間英語の研修を受けた後、予備コースとして1年間、生物、化学、物理、医療英語などを学ぶ。その後本科に進み、1~3年の前期までは基礎医学を学び、後期からは病院実習に入る。医学生として手術に参加したり、患者を受け持ち問診や検査を行ったりもする。
「父と同年代の患者さんを担当しました。最後の診察で、『医師になっても笑顔を絶やさないでね』といわれ、感激しました」
授業は厳しく、3年次までは毎年3分の1の学生が振り落とされ留年や退学を余儀なくされた。大学を卒業すれば、EUの医師免許を取得できる。将来的には日本の医師免許も取り、日本とヨーロッパを行き来しながら働くのが、吉田さんの目標だ。
妹尾優希さん(25)はスロバキアのブラチスラバにあるコメニウス大学医学部の5年生。コメニウス大は1919年に創立された、歴史ある総合大学だ。妹尾さんは中高時代をニュージーランドで過ごし、進学したイギリスの大学を中退して医学の道を選んだ。
「実習は学年全体ではなく、10人ぐらいのグループに分かれて受けます。解剖もグループごとで、1年と2年次に行いました。病院で少人数のグループで患者さんに問診したり、学生同士で採血の練習をしたりするなど、実践的な授業が多いです」
学部の試験は筆記と口頭で行われ、試験の成績に不満があれば、2回まで試験を受けなおすことができる。受けなおす口頭試験では前回と違う教官に評価してもらえるという。