「娘が『食べ物を買ってこないなら、死んでやる』『万引きしてやる』と言っている。言うことを聞いたほうがいいでしょうか」
といった切実な悩みが寄せられる。
「親も持てあましてしまい、『強制的に入院させるしかないと思っているが、適切に対応してくれる医療機関をどうやって見つければいいのかわからない』といった相談もありました」(河合医師)
■周囲に苦しみをわかってもらえない
本人も悩んでいる。高校3年の女性は2年前から過食嘔吐が始まった。学校に行っている間は普通に過ごしているが、夜間の過食が抑えられず、毎晩台所で食べ物を探し回る。翌日の父親や弟のお弁当のおかずまで食べてしまうので、家族から冷たい目で見られ、弟は口をきいてくれなくなった。「それでも無茶食いを止めることができない」と相談してきた。河合医師はこう話す。
「過食症の人の話から見えてくるのは、『自分の苦しみを周囲にわかってもらえない』という孤独感です。拒食症は極端にやせるので周囲の人も心配しますが、見た目が変わらない過食症は苦しみが伝わりづらい。吐いたもので毎日のようにトイレを詰まらせ、家族から『いいかげんにしろ』と叱られたり、友だちに話しても『だったら食べなきゃいいじゃん』と突き放されたり……。学校にも家にも居場所がなく、ますます孤立してしまうことが少なくありません。最近はSNSが同じ苦しみを抱えた人の交流の場になっていますが、間違った情報を広めてしまう危険もはらんでいます」
また、起きている時間のほとんどを過食嘔吐に費やしているので、「勉強をする時間がなく、成績が落ちてしまった」という相談もあるという。
■適切な治療に早くたどり着くためにほっとラインの利用を
ほっとラインでは40分ほどかけて、相談者の話に耳を傾ける。本人の苦しみに共感し、一人ひとりの状況に応じたアドバイスをおこないながら、摂食障害の専門的な治療を受けられる医療機関につなげていく。