私と林先生との付き合いも、ここでの研修会が始まりだ。この研修会は東京で年に数回週末に開催されるもので、教育委員会主催のものではないのでいわゆる「出張」扱いにはならない。つまり参加費は無料であるものの、交通費は自己負担になる。
彼は続けて語る。
「東京まで自腹で年に数回足を運ぶ研修ですからね。家内の財布の締め具合も気にしつつ、迷いもありましたが『半分旅行気分』で新幹線に乗り込みました。参加してみて、地方からの参加が自分だけではなく何人もいること、逆に都内の先生が少ないことに、まずはびっくりしました。
初日からいろいろな方と出会い、たくさんの学びを経験しました。そして、自分の意識の狭さに驚愕し、自分の世間知らずさを痛感したのもこの時です。加えて、仕事に対するモチベーションや、専門性、考え方などに刺激を受け、大阪への帰路、少しでも真似したいという思いに駆られました。プログラミング教育は全くのど素人で、学ぶこと全てが新鮮で、こんな学びがあるのかと衝撃を受けました。これを自分の武器(専門)にできたら市内で自慢できる、今はまだ誰も知らない、偉そうにできる、とちょっぴりいやらしい考えが脳裏をよぎったのも事実です(笑)」
私も、彼の話を聞いていて、当時のことが蘇ってきた。
林先生は子ども目線で数々の実践を重ね、報告会では見事、全国から参加した受講生の中でMVPに選ばれた。
関西出張する毎に、その後の林先生の活躍ぶりを、私は見てきた。まずは、尼崎市の有志の教員による「尼崎プログラミング研究会」を立ち上げた。今でこそ、教育委員会お墨付きの研究会が東京都や青森県には設立されているが、一個人のマンパワーで発足させたのは林先生がパイオニアだろう。
私の知る尼崎の教育長も、林先生の行動力には一目置いている。さらに、彼のプログラミング教育に関する発信力は高まり、ほぼ自費で初心者向けのシンブルなプログラミング集を作成したり、その延長に研究会のホームページを立ち上げたりして、多くの先生方に各資料を利活用してもらえるように、情報発信している。