「製造や輸送のコストが上がって、製品の競争力が低下します。物価はさらに上がるでしょう。経済は弱体化し、生活も苦しくなる。果たして、それを国民が受け入れるでしょうか。ヨーロッパでもそれは同様で、ドイツにしても、中国を切り離すのは経済的な大きな損失が避けられず、自殺行為にもなりかねず、そうするわけにはいかない、というのが一般的な話です」

 さらに、日本の特殊な事情もある。

「米国は中国を脅威ととらえて、中国を外したサプライチェーンの見直しを行っています。実際、中国との貿易量は明らかに減っている。しかし、日本の場合、米国のように『中国は脅威』とオフィシャルなかたちでは言えない。政治的に大きな問題となってしまいますから。なので、企業に対して緩やかに脱・中国を求めている」

 しかし長年、米国を中心に対中国において一定の関係を保つことで変化を促す「関与政策」を続けてきた結果、多くの企業が進出し、中国社会と深く結びつき、「もう後戻りできない状況にもなっている」とも言う。

高度外国人材と中国共産党員

 そうしたことからすれば、国内の会社や研究機関などで働く「高度外国人材」の66%(21年)が中国人なのは自然な流れといえよう。

「大学の留学生のかなりの割合が中国人です。そこから日本になじんで日本企業に就職する場合が多い」

 一方、経済産業省が06年に行った情報漏洩に関する実態調査では、漏洩があった・あったと思われる製造業関連企業126社のうち63.5%にあたる80社が中国へ漏洩した・したと考えられると回答した。

「この問題も難しいですね。情報漏洩の危険性があるからといって、優秀な中国人が日本に入ってくるのを止めてしまえば、高度外国人材は入ってこなくなる。情報を持ち出すことを禁止しても、そこで学んだことを持ち返るのを制限することはできないでしょう」

 さらに野木森主任研究員は「中国人の高度外国人材の多くは、中国共産党員です」と指摘する。

「共産党員というのは、基本的になりたい人がなるものではなくて、若いときに成績優秀な学生が選別されます。よい成績をとった学生が留学するというのも、選別のポイントで、そこで入党を迫られる。共産党員にならなければ、留学費用を支給してもらえないですから。無理やり入党させられたのだから、党に忠誠心はないという人もいます。いずれにせよ、そういう中国人しか外国の大学で学べないという現実は確かにあります」

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