昨年、導入が見送られた大学入学共通テストの「英語民間試験による4技能評価」と「国語・数学の記述式問題」のあり方について、国による1年間の検討会議が始まった。頓挫した2本柱の穴は、どう立て直していけばいいのか。「テスト理論」「英語スピーキング」「国語教育」のそれぞれ第一人者である、東京大学名誉教授の南風原朝和さん、京都工芸繊維大学教授の羽藤由美さん、日本大学教授の紅野謙介さんが、AERA2020年2月3日号で専門的な見地から提言する。
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──共通テストの「英語のスピーキング」と「記述式」の頓挫した穴はどう立て直していけばいいでしょうか。
南風原:そもそも大学入試は選抜が目的で、入学後に必要な力を測るのが目的です。東京大学ですと、文献などを読むうえで、一定レベル以上のリーディング力はないと厳しい。一方、スピーキング力は多少足りなくても、入学後でどうにかなる。求める英語力は大学によって違うはずなので、個々の大学で判断して課せばいいと思います。
羽藤:英語のスピーキング力は文法知識を詰め込んだり、定型的な発話練習を繰り返したりしても伸びません。「たくさん聞いて、読んで、必要に応じて話す」。そうしているうちに、意識しないで使える知識が定着します。知識を一方的に注入し、その蓄積を評価する「プロダクト重視」ではなく、環境を整えて生徒の中に思考力や判断力が育つのを促す「プロセス重視」の指導が必要なのです。時間がかかるのを覚悟し、能力の発達を促す環境を整えることが重要です。
──羽藤さんはコンピューター方式のスピーキングテストを開発し、大学のAO入試などで使っています。共通テストに適用させることはできますか。
羽藤:スピーキングテストの開発と運営には膨大な手間と費用がかかります。しかし、それで話す力が画期的に伸びるわけではありません。南風原先生がおっしゃったように、そもそも共通テストにスピーキング試験を入れるかどうかの議論が必要だと思います。そのうえで必要となれば、対案は考えています。