──具体的には?

羽藤:生徒のスピーキング力が一番わかるのは普段指導をしている高校の先生のはずです。民間試験活用の際に導入された、「CEFR」(セファール=ヨーロッパ言語共通参照枠)は「このレベルなら具体的にこれぐらいのことができる」という大まかな指標です。動画などを使って、先生が各生徒の能力を判断できるようにしたいと思います。大学は必要に応じて、その評価を入学者選抜に利用すればいい。

──導入見送り前に、東大や名大などが英語民間試験を必須とせず「高校がCEFRのA2レベル以上を証明する文書を提出すればいい」という選択肢を設けていました。その方式ですか。

羽藤:そうです。ところが、そこでおかしなことが起きていたんです。A2は「自分や学校、地域など身近な事柄について、簡単な文や語句を使って話すことができる」といったレベルですが、先生が判断できないので、生徒に民間試験を受けさせるというようなことがありました。適切なスピーキングの指導が十分に浸透していないのです。この方式の導入によって指導環境や指導法の改善につながることが、実は一番の狙いです。

南風原:この方法であれば受験上の地域格差や経済格差などの課題は解消されますね。

──高校の教員の評価力をいかにつけていくか、などは考えていかないといけないですね。

羽藤 大学や高校の教員の有志で議論しており、3月末ごろにたたき台を発表できればと思います。

──国語の記述式の立て直しはいかがでしょうか。

紅野:50万人規模の記述式問題の実施が不可能なことは議論するまでもなく、もはや明らかです。そもそもセンター試験は科目数が30に及ぶなど巨大化が課題で、機能分散が不可欠です。

南風原:入試改革の議論のスタート時には「センター試験のスリム化」という課題が共有されていました。それが、記述式を加え、英語民間試験も加え、逆に肥大化するところでした。

紅野:大学の多様化で、単科大学をはじめ入試科目を自前でそろえるのが難しいケースも出てきています。そうしたことを視野に入れながらも、機能分散する必要があります。記述式問題は基本的に、個々の大学がどういう学生をとっていくかを考えながら決めていけばいいと思います。実際、国公立大学の大半は既にやっているのですから。

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