この発表には後日、続報も公表された。単純に「ゾフルーザの効果がなくなる」とする考えが広まったことから、それは「誤解」だと指摘するための続報だった。しかし、薬が効きにくくなる可能性がある耐性ウイルスがある程度出現するという点については、実は塩野義製薬による治験の段階でもすでに把握されていた。やはり12歳未満の小児で高い出現率が確認されていたが、発売当初にそれが注目されることはなかった。
発売から半年ほどたってから、一部の医師から耐性変異株の出現率の高さについて指摘が出始めた。昨年10月には日本感染症学会と日本小児科学会が抗インフル薬の使い方について協議し、それぞれの考え方を示した。
ゾフルーザについて、日本感染症学会は、(1)12歳以上は推奨・非推奨は決めない(2)12歳未満は慎重に投与を検討する(3)免疫不全患者や重症患者では、単独での積極的な投与は推奨しない、とする提言をまとめた。
一方の日本小児科学会は、さらに踏み込んだ。「12歳未満の小児に対する積極的な投与を推奨しない」とする治療指針をまとめ、使用に当たっては「耐性ウイルスの出現や伝播について注意深く観察する必要があると考える」と指摘している。
メーカーの塩野義製薬はゾフルーザの耐性ウイルスについてどう考えているのか。AERAの質問に文書でこう回答し、今になってわかったことではないことを強調。
「投与後に一定の頻度で変異ウイルスが検出されることについては、臨床試験の段階から確認されており、当局にそのデータを含めて審査いただき承認を取得しております」
耐性ウイルスの出現はすべての薬剤に共通するリスクだと、ゾフルーザだけの問題ではないとも主張している。
また、関連の2学会による提言や指針については、「両学会の提言および指針の内容も踏まえて、医療機関や学会等に対して順次情報提供を行っていくことが、当社の社会的責任であると考えています」と回答した。(編集部・小田健司、川口穣)
※AERA 2020年1月20日号より抜粋