「風邪の患者さんを診ることが多いクリニックだからこそ、できる啓発活動がある」

 海外はどうか。オレゴン州在住の循環器、内科専門医、河田宏医師(41)によると、米国では入院中の患者に対して、感染症に詳しくない医師が抗菌薬を自ら決めて処方するという状況はあまりないのだという。

「入院中の患者の主治医はホスピタリストと呼ばれる内科専門医が担当することがほとんどです。良くも悪くもすぐに専門家にコンサルトする傾向があり、ホスピタリストや、それ以外の主治医が判断に困る症例があれば、必要に応じて感染症の専門家に助言をもらいます」

 仮に、感染症に詳しくない医師が、幅広い細菌に効くことから医師が安易に使いがちになるような抗菌薬を処方した場合、チェック体制も機能する。

「薬剤師から指摘を受けて、感染症委員会などで適当でないと判断された場合は変更を求められることもあります」(河田医師)

 また、開業医に関して、米国では日本と違い、内科や家庭医以外の医師が風邪や肺炎などを診察することはあまりないという。内科医や家庭医は外来診療に必要な訓練を受けており、「不必要な抗菌薬を処方する可能性は低い」(同)と指摘する。(編集部・小田健司、川口穣)

AERA 2020年1月20日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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